🌈🏳‍🌈サークルアイス🍨🍦🔥のブログ

フェミニズムとLGBTQ∔のことを考えるサークルアイスによるブログです。

ギレルモ・デル・トロ「シェイプ・オブ・ウォーター」座談会

 

 

最初の活動として、ギレルモ・デル・トロ監督による映画「シェイプ・オブ・ウォーター」を各自で鑑賞し、感想を話し合う会をしました。

 

シェイプ・オブ・ウォーターあらすじ:

1962年、米ソ冷戦時代のアメリカで、政府の極秘研究所の清掃員として働く孤独なイライザ(サリー・ホーキンス)は、同僚のゼルダオクタヴィア・スペンサー)と共に秘密の実験を目撃する。アマゾンで崇められていたという、人間ではない“彼”の特異な姿に心惹(ひ)かれた彼女は、こっそり“彼”に会いにいくようになる。ところが“彼”は、もうすぐ実験の犠牲になることが決まっており……。 (YAHOO!JAPAN映画)

 

【座談会】

 

文乃:あの、序盤に語られる「全てを壊そうとした怪物」っていうのは、魚人の男じゃなくて有害な男らしさに縛られた上司のことだったんだな。 前見たときは、魚人のことを怪物だと思ってたから話が噛み合わないなって思ってて、納得できてなかったけどこういうことだったのか…………。

 

しー:なるほど〜!なるほどな!そういうことだったのか!  

本作って本当に優秀だけど、まずは!女のオナニーの描き方がすごい良かった!!!!特に女のオナニーを自然な行為としてやらしい視線抜きに描いてるのが本当に素晴らしいよね。 でもレビューサイトにはその意味をわからなくて、「オナニーシーン気まずかった」とか、「主演のおしりとおっぱい堪能しました」とか言ってる人がいてちょっと腹が立った笑 監督も主演も、そんなこと言われるためにオナニーとヌードを撮影したわけじゃないと思うぞ。

 

文乃:わかるわかる!!!!!普通に当たり前のようにオナニーしてて、女性を人間として描いていて最高だよね。

 

しー:そうだね。ドラッグストアでTENGATENGAとして堂々と鎮座している横で、女性用のマスターベーショングッズは口紅のふりなんかをして、可愛くさりげなく置いてあることに日々違和感を覚えてる身としては、ありがたかった笑 もちろん、ああいった口紅などのかわいい形のものを好む人々がいるのはわかるんだけど、やはり女性の性欲の抑圧の問題や、ジェンダー規範に関連した事象ではあると思う。

 

文乃:確かに。

 

しー:それから、魚人と画家は頭を触り合うことでわかりあってて、それは人間は弱いところを相手にさらけ出すことでわかりあえるよ〜的な感じなのかな。頭って体の中でも大切な部分だし、傷ついたら大変なことにもなりかねないじゃん。 悪役のストリックランドは他人を信じてないし心を許さないし自分の中の弱さを抑圧してるから、頭なんて急所(=自分の弱い部分)、絶対他人に触らせないよね。 彼はポジティブシンキングの本を読んでるけど、ポジティブシンキングも結局はシステム側に好都合でしかないものだし、監督はそれをわかってるんだな〜と思った。てか、イライザタップダンスうまくね。

あと、終盤でゼルダが夫に「黙ってて」って言うの、作中における女から男へのカウンターになってるな。前半は女が黙らされてたけど後半からは女が色んな意味で喋るようになる。

 

しお子:ムチャクチャ長くなったからスクショにした、、

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しー:セックスは基本二人の人間が合意のもとにするものだからある程度の筋道が必要になるけど、オナニーは一人でできる、やりたいときにするものだから脈絡ないんだろうね笑 イライザの場合はモーニングルーティーンになってたけど。 それから、同居人の画家に関してなんだけど、ひとつは、ホモソーシャル社会で自らを証明する声を奪われている(黙らされている)者達の寄り添いを描くためだったのかなとおもう。この映画に関しては、セクシャルマイノリティの登場に「意味」があると思うね。 しお子ちゃんの「彼(画家)とイライザとの関係性にヘテロラブの可能性があったら、見る側にも雑念が入ってしまったのではないか」という意見にも頷けるんだけど、でもそれだと突き詰めれば「異性愛者の男女同士の友情は難しい」という恋愛至上主義的な価値観にもなってしまうとも思うよ。

 

文乃:なるほどな〜〜〜! ホモソ社会で黙らされてる者たちが寄り添う姿を描くためには、「男らしさ」に馴染めないシス男性でもいいじゃないかとか一瞬思ったんだけど(ゲイも「男らしさ」から逸脱しているけれど)、同居人の画家がゲイである方がより象徴的にそれを示せるのかなと思った。 あと、異性愛者同士の男女の友情は、ドラマ「セックスエデュケーション」で表現されてて!シンプルにめちゃくちゃ良いのでおすすめです!!!もうすぐ3期公開なんだけどすごい楽しみ!笑

 

きょん:みんなに100いいねを送ります!!!!!!!

 

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しー:ストリックランドも黙らされている一員である、という視点はなかったなあ。確かにそうだと思う。 だけど私はストリックランド、背景はあるにしろ、とても恐ろしい人物だと思った。どうしても私は、あまり同情的にはなれない。実際ああいう人と関わって何らかの被害を受けたことがある人が観たら、トラウマを思い出してしまいそう…。けど、本作はストリックランドの背景もちゃんと描いててそこは良かったね〜。  

エンパワメント!!!って感じのフェミニズム映画よりも、こういう少し薄暗い作品のほうが私にはスッと入ってきやすい。フェミニズムによって希望や明るさを与えようとしてくれる作品も嫌いではないけれど、私にとって女であることやフェミニズムについて考えることは、暗い側面が大きいから。        

昨年の今頃、フェミニズムを自分の思想として持ち続けることに迷いや不安を抱いていたときに本作を観て非常に安心したというか、私はひとりじゃないんだなーって思えた記憶がある。

 

文乃:きょんちゃんの意見、わかる…… 私はこの映画はフェミニズムというよりかはどちらかというと有害な男らしさへ焦点を当てた作品だと思ってるから、すごい「ストリックランドかわいそう〜〜」と思ってた。 魚人がいなくなっちゃったのを咎められたとき上司?と「まともな男だってことをいつまで証明し続ければいいんですか」「まともな男は失敗しない」って会話してて、男への圧おっっっもって思ったんだ。 女らしさと同じように、従順で真面目でエリート気質な人ほどそれに素直に従っちゃいやすいのではと思う。だから、ストリックランドは悪役だけど、そこから逃れられなくて可哀想だな、とめちゃくちゃ思いました。

 

あと、「これからの男の子たちへ」って本にあったけれど、有害な男らしさと話すことの省略には繋がりがあるらしくて。つまり自分の気持ちと向き合うチャンスが全然ないから有害になっちゃうっていう話なんだよね。ストリックランドかわいそう…

 

しー:かわいそうなだけじゃなくてしっかり有害だけどねえ…。

文乃:有害にしか突き進めないところが救いようなくてね…………

しー:そうだね。悲しいね。